市場価格のない株式とは?
市場価格のない株式とは、その名の通り、証券取引所に上場されておらず、公開市場での取引が行われていない株式を指します。これには、未上場企業の株式や、特定の条件下でしか取引できない株式が含まれます。市場価格がないため、その価値をどう評価するかが大きな課題となっています。
取得原価での評価基準
市場価格のない株式に対する評価は、金融商品基準第19項に基づき、取得原価をもって貸借対照表価額とすることが標準とされています。ここでの「取得原価」とは、株式を取得した際に実際に支払った金額を指します。つまり、購入時の価格をそのまま使うということです。
この方法は、評価の客観性を保つための手段として非常に重要です。市場価格がない株式は、公正な市場価値を持たないため、他の方法で評価を試みても、それが必ずしも正確な価値を反映しているとは限りません。したがって、取得原価で評価することは、評価の一貫性と透明性を確保するための手段となっています。
なぜ時価ではなく取得原価なのか?
ここで疑問に思うのは、なぜ現在の市場条件を反映した「時価」ではなく、取得原価を使用するのかという点です。これにはいくつかの理由があります。
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市場価格の不確実性: 市場価格が存在しないため、時価を算定することが困難です。たとえ何らかの方式で価額を推定することができたとしても、それが客観的かつ正確な価値を示す保証はありません。
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評価の一貫性: 取得原価を用いることで、長期にわたる評価の一貫性が保たれます。時価は市場の変動により頻繁に変わるため、これを基にした評価は一貫性を欠く可能性があります。
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財政状態の安定性: 取得原価を使用することで、企業の財政状態を安定的に表現することができます。時価は評価が不安定になりがちで、結果として企業の財政状態が過大または過小に評価されるリスクがあります。
例外的な取扱いとその影響
ただし、取得原価による評価にも例外があります。例えば、株式を発行した会社の財政状態が著しく悪化した場合、その実質価額が著しく低下することがあります。このような場合には、取得原価をそのまま使うことは適切ではありません。
このような状況では、企業は減損処理を行い、実質的な価値を反映した評価を行うことが求められます。これにより、企業の財政状態をより正確に反映し、投資家やステークホルダーに対する透明性を確保することができます。
表で見る取得原価評価の利点と限界
以下に、取得原価評価の利点と限界を簡潔にまとめた表を示します。
利点 | 限界 |
---|---|
評価の一貫性 | 実質価値の低下に対応しにくい |
財政状態の安定性 | 市場価格の変動を反映できない |
客観性の確保 | 評価の柔軟性に欠ける |
この表からも分かるように、取得原価での評価は、評価の一貫性や財政状態の安定性に寄与する一方で、実質的な価値の変化に対応する柔軟性を欠くという課題も抱えています。
よくある質問
取得原価で評価することのメリットは?
取得原価で評価することで、評価の一貫性を保つことができ、企業の財政状態を安定的に示すことができます。また、客観的な基準に基づいているため、評価の透明性が高まります。
市場価格がない株式の時価を算定する方法はありますか?
市場価格がない株式の時価を算定する方法はありますが、それには多くの不確実性が伴います。例えば、類似企業の市場価格や将来の収益予測に基づく方法などがありますが、これらの方法は主観的な要素が強く、必ずしも正確な価値を反映しているとは限りません。
取得原価と時価の違いは何ですか?
取得原価とは、株式を取得した際に実際に支払った金額を指します。一方、時価は、現在の市場条件下での株式の評価額を指します。取得原価は評価の一貫性を保つのに対し、時価は市場の変動を反映するため、より変動しやすいです。
取得原価による評価はどのような企業に適していますか?
取得原価による評価は、特に市場価格のない株式を多く保有している未上場企業や、長期的な投資を行っている企業に適しています。これにより、財政状態の安定性を確保しつつ、評価の一貫性を保つことが可能です。
取得原価評価のデメリットは何ですか?
取得原価評価のデメリットは、実質的な価値の変化に対応しにくい点です。特に、株式を発行した企業の財政状態が悪化した場合、取得原価が実際の価値を反映しない可能性があります。
なぜ取得原価評価の方法が継続されているのですか?
取得原価評価の方法が継続されているのは、評価の一貫性や透明性、財政状態の安定性を保つためです。時価評価が不確実性を伴うため、取得原価を用いることで、より客観的かつ安定した評価が可能となります。
結論
市場価格のない株式の評価において、取得原価を用いる方法は、その一貫性と客観性を保つための重要な手段です。市場価格がないために生じる不確実性を避け、安定した財政状態を示すためには、この方法が有効であることがわかります。しかし、企業の財政状態が変化する場合には、適切な減損処理を行い、実質的な価値を正確に反映することが求められます。